2016.5.9
Q.ダイバーシティと成果主義という考え方をマージするのは難しいことですよね。
自分もまずそう感じました。でも、今ではその二つが素直にマージする、と理解しています。チューリッヒは「ピープルビジョン」という会社の文化を掲げているのですが、それは、お客様を中心に考え社員が目的を共有すること、そして成果を正当に評価する、成果に対して対価を支払う、という考え方。誰にとっても納得感があります。全体を考えますと、それを合理的に達成するためには、一人一人が個の持ちうる能力を最大限に活かすことが必要なのです。エンパワーメント(権限委譲)、アカウンタビリティ(実行する責任感)、マネジメント力(上司力)、フレックスワーク(柔軟に働く)の中でピープルビジョンを達成する。そしてそこには、一人一人がリスペクトされ、認められる、というダイバーシティ&インクルージョンの文化が根っこに不可欠なのです。これが私の中の二つがマージする考え方です。
でも、利益を追求する企業の立場と逆行することとしては、ダイバーシティ推進には一定の投資が必要なのです。一時的にコストが必要だということ。優秀な人材を保持して維持していくためには、ある程度の余剰が必要です。ワークライフバランスを適えるために、ワークシェアができる体制もつくっておく必要があるわけです。一方で、余剰を余剰として活かしていくだけではなく、能力として開花させていく努力も必要です。何事もバランスをとりながら進めて行く必要性を感じます。
Q.現在、経営メンバーとして参画されているそうですが、女性は何名いらっしゃいますか?
課長職や次長職の女性は一定数いますが、経営会議に参加している女性メンバーは私だけです。
男性と女性では、モチベーションを感じるところやコミュニケーションスタイルも違いますから、その違いの中でより質の高い議論ができたり、違う発見や結果が出ることが大事だと思います。そのような意味でも、女性管理職を増やす必要があると思っています。
今後「ダイバーシティ推進部門」のポジションをしっかりとつくっておくためにも、結果を出すことが必要です。そういう意味でも、女性管理職を輩出するということにこだわりたいですね。
Q.ダイバーシティ推進としては、現在どのような取組みをされているのですか?
女性たちだけで当社の商品やサービスを考えて会社に提案するチームや、グローバルネットワークの中で「WIN」(Women’s Innovation Network)というチームを日本でつくったりして、ネットワークの中で学びや気づきを得るための集まりを行っています。TEDならぬZEDという人前で自分の考えや企画を発表する、というイベントも今年からはじまりました。
また、優秀な人材(タレント)を指名して特別にモニタリングをしていくというタレントマネジメントも女性だけにしぼって始めました。上司、本人それぞれに個別に私がインタビューをして応援しています。本人たちには、私自身の経験なども話しをしています。コミュニケーションレターもできるだけ多く発信し、ブログも書いています。少しずつでも良いので、変化をもたらすことができるよう、コツコツ取組んでいます。
昨年行った社員意識調査のアンケート結果において、社員の参画意識を計る4つの質問というのがあります。「自分の会社を誇りに思うか?」「親戚や仲の良い人に入社を薦められるか?」のようなものです。その結果が、前回の実施では、男性と女性で10ポイントも差があったのですが、6ポイントの差に縮まりました。嬉しかったですね。
Q.チューリッヒは今どのような会社ステージなのでしょうか?
おかげさまでチューリッヒは、日本で設立して今年で30周年となりました。急激に人も増え1000人を超える企業となりました。20年くらい経った頃から、売上も大きくなってきたこともあり、スイスにある本社との関わりが増えてきました。ダイバーシティ推進も、よりグローバルで一体となって進めて行く、という気風が高まってきています。
先日もダイバーシティ推進者の第二回目となるグローバル会合がスイスの本社で2日間のワークショップ形式で行われて、日本を代表して私が出席してきました。様々な国の人たちが120人同じ会場で出会い、様々な思いや考えを話し合う場に参加いたしました。そういう新鮮さがまた今の自分に刺激を与えていますし、今の自分にモチベーションを与えています。成長に伴って企業規模が大きくなっていけば、それに従い、やっていかなければならないことが変わっていく。人材の有り様も、筋肉質だけで良い時代もあれば、成長に応じてある程度の脂肪分が必要になっている時代もくる。でも、いつの時代においても、スピード感や実行力、創造力は必要なことだった、と実感しています。