「ロールモデルがいないから、自社の女性活躍は難航している」
「外部の方をロールモデルとしてお招きし、セミナーを開催している」
企業への調査でも、ロールモデルの欠如は、女性活躍推進における課題としてあげられています。
今回はロールモデルの効果について、検証していきたいと思います。
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働く母のリアルな声
企業における女性活躍推進の支援をしよう、と2015年に株式会社bouquetを立ち上げたとき、まず私たちは様々な企業で「働く母」たち100人にインタビューを行いました。
私たち自身も企業で働く母として色々な思いを抱き、悩み、行動してきたことが当社を立ち上げることにつながっていましたが、はて世の中の母たちはどんな感じなのだろう?自分たちの思いだけでなくもっと広く知らないと!と思い至り、この活動を行いました。
そこで聞こえてきた働く母たちのリアルな声はこんな感じです。
「会社の用意した研修講師。この人がロールモデルだ、って言われても、異次元の人過ぎて共感ゼロ」まだ雇用機会均等法以前に世界を股にかけてご活躍された女性が「わたしの頃は」を引き合いに出した講義を聞いたけれど、全くピンと来なかった。<A社女性課長>
「ロールモデルって言われてる女性のマネジャー。確かにお子さんいるんですけど親と同居されてて、残業も会議もすべてこなせるんですよ。環境が全然違うんで…」数少ない上位職に就く女性と日常的に比較され「あの人はここまでやってるぞ」とプレッシャーをかけられてしんどい。
<B社女性リーダー>
子育て支援体制充実しまくりママロールモデル
このように、ロールモデルを会社が「この人です」と掲げるのはあまり意味がないのです。
というより、むしろ逆効果。
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「ロールモデルがいない」 = 女性活躍の環境がない というメッセージ
「尊敬する人は誰ですか?」「ああなりたいと願う人は誰ですか?」
という質問は男女問わず、自分のこれまでの生き様や価値観が表出するとても良質な問いです。
ところが女性活躍推進になると会社はロールモデルを「用意したがる」。
女性たちに「わたしはああはなれません、なぜならば…」の反論の機会を提供しているようなものです。
また女性自身が「うちにはロールモデルがいなくて…」というのも、本当のメッセージは違うところにあると思います。
その会社に入社した動機、トクイなこと、スキなこと、尊敬する上司、仕事の醍醐味と感じること、今後の展望など、一人一人キャリアは異なります。
ロールモデルがいようがいまいが、自分がどうしたいのかを考え描くことができるのは自分だけ。
「うちにはロールモデルがいなくて…」の裏側にある本音は、
活躍の環境を整備できていない会社への問題提起ではないでしょうか。
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ロールモデルは多様に複数示す
このロールモデル問題。おすすめは、会社が示すのではなく、自分の中に将来なりたいモデルを組み立てる支援をすることです。
自分のこれまでのキャリアを棚卸し、今後の姿をイメージする。これはなかなか自分一人ではできないことですので、コーチング、キャリアカウンセリング、キャリアワークショップなど機会を提供する必要があります。その上で、あの先輩がヒントになりそう!とロックオンすることはとても良いことです。
それでもどうしてもロールモデルを置きたい場合は、多様な方を複数名を置く。
名称もロールモデルではなく、キャリアパスの選択肢、くらいが良いでしょう。
「この人みたいになってほしい」ではなく、
「こういう働き方が選択できます」というメッセージに緩めるイメージです。
複数示されることで、
複数の部分を統合したあり方を考える人も出てくるでしょう。
自分も次の選択肢になろうと思う人も出てくるかもしれません。
内発的な動機づけがないと人は動きません。
ロールモデル不在が言い訳になってしまっていないか、自社の施策を振り返ってみてください。