コラム

女性活躍推進、なぜこんなに進まないのか

2024.2.28

日本は、3つの構造変化に直面しています。
一つは、Demography 少子高齢化
二つ目は、Diversity 人材の多様化
三つ目は、Digitalization デジタル化

社会全体でこの変化に対応することが求められており、わたしたちの日常にも少しずつ影響が出てきています。

この二つ目のDiversity 人材の多様化において、長くテーマになっているのになかなか大きく改善も解決もしない課題が、女性の活躍推進です。

変遷から振り返ってみたいと思います。

 

 

■ 差別撤廃からのスタート、職場進出が進んだ30年間

 

高度経済成長を経て女性の職場進出が進み、“差別”を撤廃すべく1986年には男女雇用機会均等法が制定されました。
バブル崩壊以降は女性の職場進出は活発化し、ワーク・ライフ・バランスという言葉のもとで仕事と育児の両立が推進されていきます。

2010年頃以降は、少子高齢化による労働人口減少が意識され、人生100年を見据えて就労感の変化が起こり始めました。
女性においてもより能力発揮し就業継続する方向に向かい、2016年には女性活躍推進法が定められ、企業に対しても積極的な取組みが期待されてきました。

 

企業の取り組みを後押しする各種施策の展開

 

その後女性活躍推進法は改訂され、2023年9月現在、常時101人以上の従業員を抱える企業に現状分析、課題設定、実行計画の立案と公表が義務化されています。その内容は「女性の活躍・両立支援総合サイト」で誰もが閲覧することができます。

厚生労働省は「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定を受けた証として、くるみん*・プラチナくるみんマークを発行しています。
*一定の基準を満たした企業は、申請を行うことによって「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定(くるみん認定)を受けることができる。この認定を受けた企業の証が、「くるみんマーク」。

 

また、経済産業省は、なでしこ銘柄*を選定しています。
*経済産業省が東京証券取引所と共同で、平成24年度より「女性活躍推進」に優れた上場企業を「なでしこ銘柄」として選定。女性活躍の推進に優れた企業を「中長期の企業価値向上」を重視する投資家にとって魅力ある銘柄として紹介することを通じて、企業への投資を促進し、各社の取組を加速化していくことを狙いとしている。

このような動きにより、企業における女性活躍推進は一定程度の成果を上げています。

M字カーブの解消

 

かつて女性はライフイベントでの就業継続が叶わないことが多く、それが「M字カーブ」と言われ、社会的な問題になっていました。

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出典:男女共同参画局ウェブサイト「男女共同参画白書令和4年度」女性の年齢階級別労働力率(M字カーブ)の推移より

現在では、M字カーブはほぼ解消されています。
つまりライフイベントをまたいだ就業継続は叶うようになり、仕事と育児の両立は一定程度進んできたと言えるでしょう。

 

ジェンダーギャップ指数は世界125位で過去最低

 

ニュースで目にした方も多いでしょう。
日本は2023年度146か国中125位。順位が年々下がっています。
世界的にみると断然“遅れている”わけです。

M字カーブが解消されたとほっとしている場合ではありません。
本質的に実現しなければならない女性活躍は、基準が違うのです。

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「2006年の第1回は115カ国中80位だった。その後もスコアはほぼ横ばいで、順位は下落傾向が続く。2023年の125位は過去最低だった。他国が格差解消の取り組みを進める間、日本は足踏みしてきたと言える。
「分野別にみると、政治が世界最低クラスの138位(中略)、経済分野は123位

 

女性活躍推進の本質的な課題

 

先のジェンダーギャップ指数をもう少し細かくみてみましょう。
経済分野はトータルで123位ですが、

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  • 労働参加率の男女比 0.759(81位)

  • 同一労働における男女の賃金格差 0.621(75位)

  • 推定勤労所得の男女比 0.577(100位)

  • 管理的職業従事者の男女比 0.148(133位)

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と、項目ごとに差があります。

女性はそれなりに働く状態になったが、報酬水準や管理職への登用が遅れているという結果です。

女性管理職比率は、平成21年度2009年で10.2%、令和3年度2021年で12.3%です。(出所:「厚生労働省令和3年度雇用均等基本調査概要全体版」)
12年間、ほとんど変わっていません。
日本では女性が「指導的立場に立つ」ことに対していまだ抵抗があると言えます。

企業におじゃまして良く聞くのは、「うちの女性は十分活躍してるから(特に取り組む必要を感じていないよ)」という言葉です。
確かに、ある分野で長く経験を積み、専門的で高度な知識を身につけ、その道で活躍されている女性は増えたと感じます。
一方で管理職への登用が進んでいる企業はとても少ない。
「これではいけないんですか?」と聞かれることも多いのが実態です。

この「これではいけないんですか?」が問題です。何とか女性を引き上げようと努力している途上ならば、今少なくても、今後は是正されていきます。が、現状に問題を感じていない状態では、何年経っても女性の管理職登用は進まず、世界基準から遅れていく一方です。

 

女性活躍推進とは何を目指すことなのか

 

女性活躍推進とは、何を目指すことでしょうか。

たしかに、かつてより女性は働いていますし、仕事と育児は両立しやすくなり、ライフイベントで退職することもなくなりました。

教育水準ではジェンダーギャップがほぼない日本で、企業活動において極端にギャップが出ているのは、
「家事育児を主体的に担う役割は女性である」
「企業で指導的な立場を担う役割は男性である」
というわたしたちの認識が変容しきれていないから。
アンコンシャスバイアスと言われるように、無意識を変容することはとても難しいことです。

労働人口も少なくなり、価値観も多様化する中で、これまでと同質の組織運営ではうまくいきません。認識をできる限りフラットにし、男女問わず適材が管理職となる状態をつくる必要があります。

世界から取り残され続けた残念な国とならないように。

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