コラム

【スペシャルインタビュー:中編】チューリッヒ保険会社ダイバーシティ推進室室長 葛井恵美さん

2016.4.20

Q.40代はどのようなお仕事をされていたのですか?

40歳ぐらいから、副本部長として事業本部全体をみることになりました。この時代は正直辛かったですね。引き続き売上を伸ばすことを求められていましたが、お客様が増えれば増えるほど、お客様対応のバックヤードでシステムの開発が追いつかない。人が手作業で乗り越えるしかありませんでしたが、結果的に人材が疲弊して辞めたり、新しい人が定着しなかったり。本当に辞めたい、逃げたいとか、ずっと思っていました。

そして、自分の限界を超えましたね。震災後、45歳の時に職場で気持ち悪くなって救急車で運ばれました。40歳で卵巣嚢腫の手術をしたこともあり、ホルモンバランスも崩れていた中に、子育てと仕事との両立におけるストレス、離婚、親権問題、仕事も含めて色々なことを頑張りすぎたのかもしれませんね。医者から「適応障害」と診断されて、休みなさいと言われて、挫折感と孤独感を感じました。その時には「終わった」と思いました。

3ヶ月の休職後、仕事に復帰したら、当然ですが、私がいなくても仕事はまわっています。そこに痛切に寂しさを感じました。その後、マイペースで2年ぐらいは副本部長をさせていただきましたが、今後の自分がどこに向かっているのか、このままこれを続けていくのか、自分を見失っていました。そして、自分の中では一区切りつけたい感じがしていて、会社に「辞めたい」と伝えました。そんな時に、お世話になった元上司からダイバーシティ推進室の室長を打診され、そのポジションを引受けて今に至ります。

【スペシャルインタビュー:中編】チューリッヒ保険会社ダイバーシティ推進室室長 葛井恵美さん

Q.そこまで、踏ん張れた原動力は何だったのですか?

結局言ってしまえば、自己実現だと思います。小さい頃から本当に“籠の中の鳥”状態で甘やかされて育っていましたし、成績も優秀ではなかったし、コンプレックスだらけでした。自分は何のとりえもない人間だと思っていました。そんな私が、チューリッヒに入社してチャンスをもらって仕事に向き合ってみると、これまで見たことのない自分がいっぱい出てくるんですよ。例えば、男勝りな自分、周囲から良くやっていると褒められる自分、意外にも新しい自分に沢山出会えました。その面白さと新鮮さがたまらなく好きでした。まさに自己実現です。

感覚的には、自己実現をしたいから仕事をしていたというよりも、がむしゃらに仕事をしていて、ふと振り返ると成長した自分がいるんですね。自分って意外と捨てたもんじゃない、と思えたのが本当に良かったです。「わたし、生きてる!」という実感をずっと持って歩いてきましたから、もうこれで死んでもいいな、と思えるぐらい(笑)でも、まだ生かされている。だからこそ50歳からは自然体で楽しもうと思っています。

Q.ダイバーシティ推進室の室長に就任されてから、どのような変化がありましたか?

2014年にダイバーシティ推進室の室長になってから、今までの自分はまだまだ視野が狭かったことに気付きましたね。自分では分かっているつもりでいたのですが、想像以上に会社の他の組織も大きくなっていて、企業として成長していました。これまでの私は、やはり小さい規模の限られたチームメンバーで何かをつくりあげていたんですね。でも、会社を見渡すと、本当に様々な人がいて。会社内を見回すと素晴らしい個性があるのに、周囲に認められていないため活かされていない人がいると感じます。その人たちを活かしていくのが私の仕事です。社員全員がオーナーシップを持って会社に参画する状態をどう実現するのか、ということが私の目標です。

このようなテーマは、長期的に取組まないと結果がでないことも分かってはいるのですが、もともと私は気が短くて、結果が直ぐに欲しいタイプなので、もどかしいですね。ちょっとずつ前に進んでいるだろうということで納得させていますが、葛藤も感じますし、孤独も感じています。

Q.孤独を感じているのはなぜですか?

今まで長い間、限られた自分のチームの中で仕事を成し遂げてきたんですね。これからは、もっと大きな単位の会社というチーム力を活かしていかなければならない。会社というチームになると自分が今まで部下に持っていたメンバーとは違って、本当に様々な人がいる。部長以上のリーダーはほぼ全員男性。理解を求めて、変化を求めて動かしていかなければならないというのが私のミッションです。自分のやっていくべきことが、ステージがひとつあがったんだ、と感じています。それはより孤独感をもたらすものだ、ということです。

「ダイバーシティ推進」は、「少子高齢化」「格差問題」「経済成長」「イノベーション」「グローバリゼーション」、混沌とした世情から考えても絶対に取組む必要があるわけで、企業間の競争ということを考えれば、早くにその文化をつくり、結果を出していった方が企業として生き残る、と感じています。当社はスタートは早くなかったかもしれませんが、企業規模が幸いして早く変化を起こすことができます。逆に強みになるんだ、ということを経営陣に伝えています。企業文化を変えていこう、というときには、経営陣が強い思いを持って社員にメッセージを伝えていかなければスピード感をもって動きません。一方、当然ながら売上・利益をあげていくことが企業として求められる一番のプライオリティです。必要なのは常にバランスですね。

後編に続く…

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