コラム

働く母、パラレルワークに挑戦する(中編)

2016.2.17

Q.まずは、ジャズシンガーとしての智子さんの話から聞かせてください。

ジャズは、とにかく現場に行かないと上達しません。先生に「行け!」といわれるままに、アマチュアでも参加できるセッションに出向き、歌い、次第にその場で創り上げられる音楽というものにはまっていきました。クラシックのように、同じ曲を何ヶ月も練習して完成度を高めて行く世界よりも、自分にフィットしたんでしょうね。掛け合いや、即興性、皆の音を聞いて自分を変える、その場で生まれる会話のような音楽を、心から楽しんでいました。

そして、レッスンに通い始めて半年後にライブデビューしました。1年後には、自身がリーダーとして周りに声をかけ、ライブを企画するようにもなり、月4回程度はライブを開くようになっていました。憧れだった店に出演できたり、素晴らしいミュージシャンたちと共演できたり・・・もう、楽しくて楽しくてたまらない時期に突入です。

そして、妊娠が発覚します。

喜ぶべき出来事なのに、当時の私はジャズにあまりにも夢中になっていたので、正直、ショックでしたね。なぜ今なのか?と。
もう二度とステージに立てないかもしれないと、激しく落ち込みました。

Q.妊娠を機に、ジャズシンガーとしての活動は一旦ストップですか?

いえ、実は、加速しました 笑。しばらくの間は歌えなくなる!と思い、精力的にライブ活動を行う一方で、レコーディングを決意します。アルバムを出そう!と。なんとか12曲分の音を録り終えたところで出産し、その後の生活が落ち着いてからアルバムとしての仕上げに取りかかったので、世に出したのは2年後になりましたが。ライブ活動も、産後1年弱は潔くお休みしました。

一方で英会話のレッスンは、生徒さんの数や契約スタイルを調整して、産後3ヶ月でスタートしました。例えば、毎週決まった時間での定期契約よりも、月1〜2回、隔週でのレッスンを多めにして、子供の預け先 — 実家の母や、横浜市の子育てサポートシステム — と、上手く調整しながら、子供にも自分にも無理の無いペースで、始動しました。

働く母、パラレルワークに挑戦する(中編)

Q.英会話講師としてはすぐに復職し、ジャズシンガーとしては1年弱の育休をとった というわけですね。

そうですね。でも、月一回の仲間たちとの練習会だけは続けていました。全く離れることはできなくて。この頃は、1年間は休もうと決めているけど、ミュージシャンからのライブの誘いを受ける度に、復帰したいという気持ちや焦りが酷くて苦しかったですね。

子供が1歳になるころ、産後初のライブに挑戦します。まだ授乳中だったので、お店の近くの保育園を探して、そこで直前まで授乳して、ライブへ。事前の保育園への申し込みやら登録準備に通うのも大変でしたし、当日のバタバタも想像を超えるもので。終わった後は、ライブ復帰への喜びよりも、正直もう懲り懲りという気分でした。自分にも子供にも無理のないペースでやろうと、腹を括りました。出産前のようなペースはしばらく望まないと。

Q.自分にも子供にも無理のないペース — これは、智子さんのジャズへの情熱を考えると、かなり難しいものと想像しますが?

そうなんです、難しいんです。バランスをとるって、本当に難しい!
実は、出産前にアプライしていたジャズコンテストで予選通過、ファイナリストとして大御所の先生方から評価を頂く機会に恵まれます。さらには、出産前に録っていた音源が、レコーディングメンバーのおかげで音楽レーベルに聴いていただけて、その内の2曲が綾戸智恵さんも参加するアルバムに採用されました。

そうなると、ムクムクとプロ意識が芽生え始めて、以前の「楽しいから離れたくない!」という気持ちではなく、「やらねば!」という気持ちに後押しされる感じです。今振り返れば、プロとしてのスタート地点に立ったのは、実はこの、かなり苦しい時期だったという 苦笑。

〜〜〜ジャズシンガーとしての評価・期待の高まりに背中を押される中で、智子さんは、どのようにバランスを保って行くのか・・・?

後編につづく…

 

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